こんにちは、夢頭(ユメガシラ)です。
「自己都合退職を理由に、退職までの給与が減額されることはあるの?」
退職を検討しているのであれば、このような疑問をお持ちの方も多いかと思います。
自己都合による退職を申し出ると、職場によっては給与の減額を迫ってくることがあります。
確かに自己都合で現職を退職するとなると、多かれ少なかれ職場に迷惑をかけることになるでしょう。
とはいえ、それを理由に給与を減額されては、たまったものではありません。
果たして自己都合退職を理由に、給与が減額されることは認められるのでしょうか?
今回はこの点について、書いていきたいと思います。
一応、私も社労士の資格を有しており、さらに人事部としての実務経験も8年近くありますので、多少の参考にはなるかと…。
▼離職票が勝手に自己都合退職にされていた場合の対処法については、下記の記事をご参照ください。
自己都合退職を理由に給与を減額することは違法
「自己都合退職を理由に、給与が減額されることは認められるのか?」
この点について、さっそく結論を申し上げますと、
「認められない」
です。
なぜなら、賃金の減額や休日の減少といった、労働者にとって不利益となるような労働条件の変更は、従業員の合意なしに行うことが原則として禁止されているからです(労働契約法第9条)。
自己都合退職を理由とした給与の減額は、明らかに不利益変更であり、違法となります。
よって、一方的に給与の減額を突きつけられた場合には、従う必要はありません。
まずは、この点をしっかりと認識しておきましょう。
自己都合退職を理由に給与の減額が認められるケース
前述の通り、自己都合退職を理由に給与を減額することは違法ですが、例外的に認められるケースもあります。
それは、「労働者の合意があったケース」です。
労働条件の不利益変更は確かに禁止されていますが、それはあくまで「労働者の合意なしに行った」場合です。
逆に言えば、労働者の合意があれば認められることになります。
よって、職場とのゴタゴタを避けるために、給与の減額に対して安易に首を縦に振ってはいけません。
給与の減額を迫られた場合には、きっぱりと拒否の意思を示しましょう。
自己都合退職で給与の減額を迫ってくるパターン
しかしながら、最近は「直接的に給与の減額を迫ることは違法」と知っている経営者も多く、もっともらしい理由を付けて給与の減額を迫ってくるパターンが増えているため、注意が必要です。
そこで本章では、自己都合退職で給与の減額を迫ってくるパターンをご紹介します。
具体的には、以下の通りです。
- 迷惑をかけたことを理由に給与の減額を迫ってくるパターン
- 降格を迫ってくるパターン
- 職務内容の変更を理由に減額を迫ってくるパターン
①迷惑をかけたことを理由に給与の減額を迫ってくるパターン
1つ目は、「迷惑をかけたことを理由に給与の減額を迫ってくるパターン」です。
冒頭でも述べた通り、自己都合で退職するとなると、多かれ少なかれ職場に迷惑をかけることになります。
そのため、悪質な企業はそこを突いてきます。
「ただでさえ人手不足なのに、自分勝手に退職して迷惑をかけた」
「君が辞めることで、残された社員の負担が大きくなる」
など、退職者の良心につけ込むような理由を付けて、給与の減額を迫ってくるのです。
しかしながら、それを理由に給与の減額をすることは到底認められません。
そのような企業は、「退職者に給与を払いたくない」というのが本音でしょうから、従う必要は全くないでしょう。
特に責任感の強い方ほど、迷惑をかけた気持ちが強くなるため、注意が必要です。
②降格を迫ってくるパターン
2つ目は、「降格を迫ってくるパターン」です。
悪質な企業は「もうすぐ退職するから」という理由で、降格を迫ってくることもあります。
具体的には、役職を外されて平社員にされたり、正社員から契約社員やアルバイトへ降格させられたりするパターンです。
降格となれば、当然ながら給与も下がるため、企業側の狙いはそこにあります。
退職することだけを理由に降格を命じることは到底認められないため、もし降格を迫られたとしても、従う必要は全くありません。
特に、正社員から契約社員やアルバイトへの降格は、もらえるハズだった賞与がもらえなくなる可能性があるため、注意しましょう。
③職務内容の変更を理由に給与の減額を迫ってくるパターン
3つ目は、「職務内容の変更を理由に給与の減額を迫ってくるパターン」です。
退職するとなると、以後は引き継ぎが業務の中心になることも多いでしょう。
悪質な企業は、そこも突いてくる可能性があります。
つまり、「引き継ぎしかしていないのに、これまで通りの給与額を支払うのは、職務内容に見合っているとは言えない」などと強引なこじつけで、給与の減額を迫ってくるのです。
しかしながら、引き継ぎも重要な業務です。
確かに売上には貢献していないかもしれませんが、それだけを理由に給与の減額を迫るのは到底認められません。
自己都合退職を理由に給与の減額を迫られた時の対処法
では、実際に自己都合による退職を申し出たことで給与の減額を迫られた時は、どのように対処すればいいのでしょうか?
本章では、自己都合退職を理由に給与の減額を迫られた時の対処法をご紹介します。
具体的には、以下の通りです。
- きっぱりと拒否する
- 未払い給与として減額分の支払を請求する
きっぱりと拒否する
前述の通り、労働者の合意があったケース場合には給与の減額も認められてしまうため、給与の減額を迫られた時はきっぱりと拒否することが重要です。
特に書面での合意を求められた場合は、要注意です。
同意書等にサインをしてしまうと、書面として証拠が残ってしまうため、必ず断るようにしましょう。
強迫による意思表示は取り消すことができます(民法96条)が、やはり書面として証拠を残さないのがベストと言えます。
未払い給与として減額分の支払を請求する
もし、同意もしていないのに一方的に給与を減額された場合には、退職後に未払い給与として減額分の支払いを請求することが可能です。
具体的には、内容証明郵便で職場に請求書を送りましょう。
内容証明を利用することで、「いつ、誰が誰に対して、どのような内容の文書を送ったか」という公的な記録を残すことができます。
請求書を送っても何の反応がないようであれば、労働基準監督署への申告も検討しましょう。
100%動いてくれるとは限りませんが、労働基準監督署から職場に対して指導を与えてくれる可能性があります。
下手に労働基準監督署に申告してしまうと、通報したことが職場にバレるのでは?
通報者の情報が労働基準監督署から職場に伝えられることはないため、その点は心配ないでしょう。
ただし、内容から通報者を推定される可能性もあるため、絶対にバレないとは言い切れませんが…。
なお、未払い給与も含めた賃金の請求権は、時効によって3年で消滅する(※令和2年3月31日以前に支払い期日が到来した賃金については2年)ため、注意が必要です。
まとめ:泣き寝入りは厳禁
最後にまとめておきます。
- 自己都合退職を理由とした給与の減額は違法であり、従う必要はなし
- 自己都合退職を理由に給与の減額が認められるのは、労働者の合意があった場合のみ
- 自己都合退職を理由に給与の減額を迫られた時は、きっぱりと拒否することが重要
- 同意もしていないのに一方的に給与を減額された場合には、退職後に未払い給与として減額分の支払いを請求することが可能
繰り返しになりますが、自己都合退職を理由とした給与の減額は違法であり、従う必要はありません。
万が一、同意もなしに一方的に給与を減額された場合には、請求書の送付や労働基準監督署への申告などの対応が必要です。
なお、くれぐれも泣き寝入りは厳禁です。
働いた分の給与をもらうのは、労働者として当然の権利であるため、毅然とした態度で対応していきましょう。
自社の利益しか考えていないような悪徳企業に、未来はありません。
以上、またお会いしましょう。