こんにちは、夢頭(ユメガシラ)です。
「会社都合のハズなのに、届いた離職票を見たら勝手に自己都合退職にされていた!」
退職後に離職票を受け取った際に、このような経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。
離職票は、失業保険の受給の際に必要となる書類です。
そして、失業保険を受給する際に重要となってくるのが、自己都合か会社都合かの離職理由の違いです。
詳しくは後述しますが、自己都合か会社都合かで失業保険のもらえる時期や日数などが違ってくるため、その影響はかなり大きいと言えます。
果たして、離職票が勝手に自己都合退職にされていた場合には、どうすればいいのでしょうか?
今回はこの点について、書いていきたいと思います。
一応、私も社労士の資格を有しており、過去に自己都合退職にされていた離職票を会社都合に変更できた経験もありますので、多少の参考にはなるかと…。
▼そもそも離職票が届かない場合は、下記の記事をご参照ください。
離職理由が自己都合と会社都合では、どう違う?
本題に入る前に、そもそも離職理由が自己都合と会社都合では、どう違ってくるのでしょうか?
自己都合退職とは、転職や独立といった労働者の個人的な都合でする退職です。
一方の会社都合退職とは、リストラや倒産といった職場側の都合でする退職です。
このように、会社都合退職の方が労働者の意に反して退職をさせられているケースがほとんどのため、会社都合退職の方がさまざまな面で優遇されています。
具体的には、以下のような違いがあります。
- 給付制限期間の有無
- 給付日数の違い
- 国民健康保険料の金額
給付制限期間の有無
最も影響が大きいのが、失業手当の給付制限期間の有無です。
具体的には、自己都合退職には給付制限期間が設けられていますが、会社都合退職には給付制限期間がありません。
通常、ハローワークで失業保険の手続きをすると、7日間の待期期間の後に失業手当の給付が開始されます。
しかし、自己都合退職の場合には、待期期間の後に2ヶ月の給付制限期間(※2020年10月前の退職であれば3ヶ月)が発生してしまいます。
つまり、自己都合退職の場合には、会社都合退職に比べて失業手当を受給できるのが単純に2ヶ月遅くなってしまうのです。
これは金銭的に余裕がない方にとっては、かなり影響が大きいでしょう。
給付日数の違い
続いての違いは、失業手当の給付日数(失業手当を受給できる日数)です。
全般的に、会社都合退職の方が支給日数が長くなっており、自己都合退職よりも優遇されています。
なお、具体的な給付日数は、年齢や被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)などによって細かく異なってくるため、詳細は下記をご参照ください。
出典:厚生労働省ハローワークインターネットサービス『基本手当の所定給付日数』
国民健康保険料の金額
失業保険の話ではありませんが、退職後に国民健康保険に加入する場合には、会社都合退職の方が保険料が安くなります。
具体的には、会社都合退職の場合には、「国民健康保険料の軽減制度」を申請することが可能です。
国民健康保険料の保険料額は、決して安くはありません。
しかし軽減制度を申請すれば、保険料の計算元となる給与所得の金額を30/100として計算してもらえるため、保険料の大幅な減額に期待できます。
※実際の金額や手続き等の詳細は、お住いの市役所でご確認ください。
退職後はしばらく無収入になる方も多いでしょうから、この点も影響は大きいと言えます。
なぜ勝手に離職票を自己都合退職にしてくる?
前述の通り、離職理由が自己都合と会社都合では大きな違いがあります。
にもかかわらず、なぜ職場は勝手に自己都合退職にしてくるのでしょうか?
それは、「会社都合の退職者を出すと、職場に不利益があるから」です。
具体的には、リストラなどの会社都合退職者を出すと、国から支払われる助成金を一定期間申請できなくなり、場合によっては返還しなければならない可能性があるからです。
既に職場を去った人間のために、本来もらえるハズだった助成金がパーになるのは、職場としても避けたいところでしょう。
このような理由から、あえて恣意的に離職理由を変えることがあるのです。
もちろん、単純な処理ミスや担当者の勘違いのケースなどもあるでしょうが、上記の理由で恣意的に自己都合退職にしてくるケースも多いのです。
助成金を受け取りたいという職場側の事情もわからなくはないですが、だからといって、勝手に自己都合退職にしていい理由にはならないでしょう…。
離職票が勝手に自己都合退職にされていた時の対処法
それでは本題に戻って、離職票が勝手に自己都合退職にされていた場合は、実際にどうすればいいのでしょうか?
その場合は、ハローワークで「異議申し立て」の手続きを行いましょう。
異議申し立て手続きの具体的な流れは、以下の通りです。
- 離職票で異議「有り」に〇をする
- ハローワークで異議がある旨を申し出る
- ハローワークの最終判断を待つ
- 異議申し立てが認められれば、遡って会社都合退職扱いになる
①離職票で異議「有り」に〇をする
まず、お手元に届いた離職票-2をご用意ください。
用紙の右下箇所に「⑯離職者本人の判断」という欄がありますので、ここの異議「有り」に〇を付けてください。
※画像の赤枠部分です。
②ハローワークで異議がある旨を申し出る
次はその離職票を持参して、管轄のハローワークで失業保険の手続きを進める際に、離職理由に異議がある旨を伝えましょう。
別途、異議申立書の記載や担当者からのヒアリングがあるかと思いますので、そこで詳しい事情を説明します。
なお、その際に証拠書類が必要となる場合があります。
証拠書類の例としては…、
- 雇用契約書(労働契約の証明)
- タイムカードや入退館記録等の労働時間を証明できるもの(労働時間の証明)
- 給与明細や源泉徴収票(給与の証明)
などが挙げられます。
上記に限らず、証拠書類として使えそうなものは提出しておきましょう。
なお、労働時間を証明できるものとしては、「社内PCのログ・メール履歴」や「業務日報」なども有効です。
③ハローワークの最終判断を待つ
提出後はハローワーク主体で調査が進められるため、基本的には結果を待つ形になります。
なお、最終的な判断を下すのはあくまでハローワークです。
もし離職理由の変更が却下されてしまい、その決定に不服がある場合には、「雇用保険審査官」に審査を請求することができます。
手続きはやや煩雑ですが、費用は郵送費くらいしか発生しないため、どうしても納得できない場合には試してみてもいいかもしれません。
手続きの流れについては、下記をご参照ください。
私も別件で審査を請求したことがあります。
結果は覆りませんでしたが…。
そういうところは、ムダに行動力がありますね。
④異議申し立てが認められれば、遡って会社都合退職扱いになる
調査中はいったん自己都合退職扱いとなるため、給付制限期間も発生してしまいます。
しかし調査の結果、自己都合から会社都合退職に変更されれば、給付制限期間が無いものとして遡及調整されます。
一方、離職理由の変更が却下されてしまった場合には、そのまま自己都合退職扱いになります。
後はハローワークの担当者の指示に従って進めていけば、大丈夫です。
なお、異議申し立てに気を取られ過ぎて、肝心の求職活動(失業手当を受給するための活動実績)をお忘れなきようご注意ください…。
前の職場との直接的なやり取りは発生しない
さて、中には「離職理由の異議申し立てをすると、前の職場にもその連絡がいってしまうため、何かしらの不利益や嫌がらせを受けるのではないか?」といった心配をされる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、この点については、心配は無用です。
なぜなら、前の職場との直接的なやり取りは発生しないからです。
異議申し立てをしても、調査自体はハローワークと前の職場とのやり取りだけで完結します。
仮に何かしらの確認事項があったとしても、ハローワークが間に入るため、前の職場と直接やり取りをすることはありません。
万が一、前の職場から脅迫めいた電話やメールがきた場合には、労基署に相談してみましょう。
まとめ:泣き寝入りで終わらせてはいけない
最後にまとめておきます。
- 離職理由が自己都合と会社都合では、大きな違いがある(会社都合の方が優遇されている)
- 会社都合の退職者を出すと、助成金の申請ができなくなるなどの不利益が発生するため、恣意的に離職理由を変えてくる職場も存在する
- 離職票が勝手に自己都合退職にされていた場合には、ハローワークで異議申し立ての手続きができる
- 異議申し立てが認められれば、遡って会社都合退職扱いになる
- 異議申し立てをしても、前の職場との直接的なやり取りは発生しない
繰り返しになりますが、離職理由が自己都合か会社都合かどうかでは、大きな違いがあります。
多少の手間はかかるものの、基本的に異議申し立てにリスクはありません。
くれぐれも泣き寝入りで終わらせないよう、明らかに離職理由が違っている場合には、ハローワークに異議申し立てをすることをオススメします。
私の現職の『自宅警備員』は、24時間365日休みなしの超過酷労働なため、辞める際は必ず会社都合退職にしてもらうようにします。
………。
以上、またお会いしましょう。